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読書感想文

学生時代は「課題図書」と称して、無理矢理その時の気分でないものを読ませられるのが本当に嫌だったんですが、学生が終わると「もっと勉強すりゃよかった・・」と後悔するのと一緒で、「もっと本を読んでおけばよかった・・」と、社会人として時間のスキマで読書する今の自分は思うのでした。

さて。前回、服部真澄さんの本を読むぞ!と意気込んでた割に、ふと手を出してしまった本はまったく別で、全然違う著者の本の感想文を書きたいと思います。

道尾秀介さん著『向日葵の咲かない夏

「このミステリーがすごい!」の第1位だそうです。なもんで読んでみました。
小学4年生の主人公ミチオは終業式の日に担任の先生に頼まれ、欠席した同級生の家に訪れる。きぃ、きぃぃ、と家の中から聞こえるその音を不審に思って覗くと、その同級生は首をつって死んでいた。衝撃の中、学校にその有様を報告しにいっている間に、同級生の遺体がこつ然と消えてしまう。一週間後、同級生はあるものに姿を変えてミチオの前に現れ、「僕の遺体を探してくれ」と言う。ミチオは妹のミカと共に事件を追い始める・・。

というのがあらすじです。

全体としてなにかこう・・・「歪んで』います。
主人公ミチオの視点で描かれる凄惨な事件。同時に近所で何件も起こっている小動物の虐殺。死んだ同級生がクラスで苛められていた事。ミチオのお母さんがなにかのトラウマでちょっと言動がおかしい事。担任の先生が過去におかしな内容の小説を出版している事。
などなど。
小学生の視点で書かれているので、小学生なりに理解の及ばない事や判断が出来ない事、行動範囲が狭い事が、読んでる側としてはもどかしい。それゆえに危なっかしい。照らし合わせる経験がまだ無い小学生の前に提示される情報にウソが混じっていたりして、怪しかったり危なかったりする事象全てに翻弄される。つまりは車酔いする感覚です。
なにより一番印象に残るのが、主人公も「歪んで」いる事。
ジャンプとかだったら正義感溢れる元気な小学生が、最後まで「いけない事はいけない!」と信念を曲げずに戦う、とかいう展開になるんでしょうが、この小説の主人公はそんなに爽やかではない。小学生なりに臆病であり、4年生という年齢なりに狡さや多少の客観性を持ち合わせているので、その不安定な中での衝動を押さえられないところが、一番子供らしいといえばそうなりますが、子供なので残酷な面もある。
生まれ変わった姿で元級友が現れるというところでファンタジー(幻想)なのかと思っていましたが、この小説全体の「歪み」の中で見ると、どちらかというと幻覚、思い込み、錯覚、といった病的な要素として扱われている。
主観を題材として扱っている作品は沢山ありますが、この本は主観も主観、内側すぎる。
全体が「病的」な感じです。

なもんで、読み終わった後は、なんだかいやーーーーーーーーな気分。でもなにか衝撃的。作家として読者の心にインパクトを残すということが「成功」だとするならば、成功している作品かな、と思います。そしてかなり好き嫌いが別れる作品だと思います。これはね、こんな涼しく過ごしやすい季節よりも、夏まっただ中で読むべきと思います。なんとなく。
でも、こんな嫌な気分になったのに、この著者って他の作品はどうなんだ?!と思わされました。もうちょっと他の作品も読んでみたいと思います。


そして、それとは別に雫井修介さん著『火の粉

元・裁判官の隣家に二年前に無罪判決を下した男が越してくる。
老人介護の手伝い、気の利いた贈り物、なにかと親切、という善意で元・裁判官一家の心を掴む男。一家それぞれの心の隙間にするりと入り込み、ひたすら慰め手を貸す様は一見、「まさに無罪である」と思わせる印象。しかし、隣にその男が越して来たときから不可解な事件、そして家族の心がバラバラになっていく・・。

というのがあらずじです。

上の「向日葵の咲かない夏」を読んだ後に読んだので、もう本当にミステリーらしいミステリーだ!と思いました。なんていうか、「向日葵の咲かない夏」はどちらかというとホラーだと思うんですよ。司法関係者とか警察とか出てくると「あーミステリーを読んでる!」って感じがするのは私だけ?

まず第一に、裁判所で無罪になった男「武内」は、一家惨殺した犯人として出廷しているんですが、動機があまりにも不可解。「贈ったネクタイを締めてくれなかったから。」...
そして犯行当時、武内の背中にも重傷と思われる金属バットによる骨折、打ち身があったことから、やはり誰か外部の人間が入り込んできて惨殺した、という結果になり彼は無罪放免されました。
釈然としない遺族、そして限りなく黒に近いと主張して来た検察側。ザワザワとした中で証拠不十分として放免された武内は、その後、退職した裁判官・梶間の隣に越してきます。虫も殺さないような笑顔と共に。
どんなに裁判で無罪とされようが、凄惨な事件の容疑者とされていた人物が近くに住んでいるというのは、不気味な事だと思います。人権問題まで発展すると困るんで印象だけですけど。あまりいい気持ちはしませんよね。

この物語の中心となる梶間一家には「老人介護」という闇があります。姑の介護の一番の功労者である梶間の妻。そして梶間夫妻の息子の嫁。口うるさい義姉。

介護というのは、私も実の父の介護をしたことがある身で思いますが、本当に終わりの無い、気持ちの持って行き場の無い、過酷なものです。肉親でありながらでも病気である相手に100%シンクロできるわけでもなく、かといって手を抜くことは出来ず愚痴れるものでもなく。何がいけないって病気になった人ではなく、病気そのものがいけないんだ、といつまで思えるか。病人は辛いのでわがままになるし(たぶん、私だって病気になって辛かったら訴えてわがままになると思う)繋がりが濃ければ濃いほど、そのわがままは傍若無人なものになっていくでしょう。まして、介護というのは「仕事」じゃない、「生活」なんですよ。だから割り切れないけど誰にも言えない、という思いは鬱積していきます。
自分の親でも辛いのに、この小説では相手の親だったりするわけです。

そうした心の隙間や闇は理解できます。そこで「介護、大変でしょう。手伝いましょうか?」とにこやかに寄ってくる人がいたら、縋る気持ちはよくわかる。
そうして、武内は一家の家に入ってきます。そして甲斐甲斐しく働いてくれるおかげで、身体を休める事ができて心のゆとりも生まれてきます。今まで笑顔の無かった一家に笑顔が戻る。そういう意味で、武内は梶間家にとって最大の功労を残し、一気に家族の心を掴みます。
ただ・・・気がつくと武内は暗黙の了解で「家族のスペース」とされるところにまで、なぜか入り込んでいたりします。

「冷蔵庫は勝手に開けていいけど、寝室には入らないでね」

というような、暗黙に守られてるルールってありますよね。でもいつのまにやら入り込んでる。「あれ?」と思う違和感はあるけれど、基本的にこちらがお願いして来てもらってるから、しょうがない・・かな?という小さな違和感から始まります。そして「ご近所だから」強く言って関係が壊れるのはちょっと・・という日本的な部分も本当によく描かれています。だからこそ、その暗黙の領域にひょいと入り込んでくる「武内」がだんだん不気味になっていきます。価値観が違うのかな、というところから異常なんじゃないか、と確信するまで、舞台は本当は人の絶対安全地帯である「我が家」なわけです。これは怖い。というか嫌だ。自分の家くらい安全であって欲しい。まして、自分が無罪判決を下した人間なんだから、絶対に「無害」であって欲しい・・・。

ラストは、とっても納得できるものになっています。
読後感としては爽やか。
法や科学で理由が付けられない「異常性」、それがどこにいても理不尽に起こり身に降り掛かりうるものだということが、本当に怖いと思いました。何が怖いって、幽霊とかより異常で行動力のある人間が一番怖い。
私は空手やってますが、そういった身体を鍛えて強くなる、という種類の強さでは太刀打ちできない領域があります。理由が説明できない怖さ、それが「異常」だと。

というわけで、「火の粉」はオススメです。

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プロフィール

とめきち

Author:とめきち
クリエイティブ方面、職人行き。フリーです。
Macでいろいろ作る事を生業としてます。
ロゴとかイラストとか名刺とかバンドのポスターとか。
その他、なんかいろいろです。
最近、CDジャケットのイラストとかやるようになりました。


作業中に無限ループしてるのは山崎まさよしさんの曲。
あと、料理も好きです。
お酒も、とてもよく嗜みます。

極フツーのちょっと格闘技に足つっこんだ30代です。
だがしかし、2013年に念願の息子が生まれてからは体動かせてません。
ていうより、妊娠出産を経て体重増えまくってしまったので、
現在は動く以前の問題として、糖質制限しています。
同じような方いらっしゃるかしら?がんばっていきましょう!

大事にしてるものは家族。
現在2歳の息子を中心とした生活です。

TwitterのIDはtomekichi_3だす。
(でもあんまりつぶやいてませんが。)

mixiのHNはきゅー(ひらがな)です。


そろそろ、山崎まさよしさんライブを聴きに行きたいところです。

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